メンタルヘルス

カスハラ?心理的負荷による精神障害の認定基準とカスハラ対策について

 社労士の代理権は労働諸法令に限定されています。その中でもご相談が増えているのは、心理的負荷による精神障害とその労災認定の御相談です。特にパワーハラスメントについては2020年6月から改正労働施策総合推進法が施行され、パワーハラスメントの定義が法律上規定されたこと等を踏まえ、認定基準の「業務による心理的負荷評価表」にパワーハラスメントが明示されました。さらに厚生労働省は「心理的負荷による精神障害の認定基準」を2023年9月1日付で改訂し、カスタマーハラスメントが追記され厚生労働省労働基準局長から都道府県労働局長宛てに通知しました。

 この改正は、近年の社会情勢の変化等に鑑み、最新の医学的知見を踏まえて「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」において検討を行い、2023年7月に報告書が取りまとめられたことを受けたものです。

【具体的な改訂内容】

・カスタマーハラスメントの追加

・パワーハラスメントの6類型すべての具体例の明記等

・心理的負荷の強度が「強」「中」「弱」となる具体例を拡充

・精神障害の悪化の業務起因性が認められる範囲を見直し

・医学意見の収集方法を効率化



厚生労働省では、業務により精神障害を発病された方に対して、改正後の本基準に基づき、一層迅速・適正な労災補償を行っていくとしています。また、東京都ではカスタマーハラスメント防止対策に関する検討部会が昨年10月より設けられ、検討がされています。



【東京都のカスタマーハラスメント定義】

①就業者の人格又は尊厳を侵害する

②就業環境を害する

③事業活動の継続性に影響

(具体例)

⑴ 違法な行為

暴行、傷害、脅迫、強要、名誉毀損、侮辱、業務妨害、不退去 他

⑵ 不当な行為

申出の内容 又は 行為の手段・態様 が社会通念上相当であると認められないもの

代表的な言動の類型(ガイドラインへの記載を想定)

○ 申出の内容が相当と認められない場合の例

⑴ 事業者の提供する商品・サービスに瑕疵・過失が認められない場合

⑵ 申出の内容が、事業者の提供する商品・サービスの内容とは関係がない場合

○ 行為の手段・態様が社会通念上相当と認められない場合の例

⑴ 身体的な攻撃 ⑵ 精神的な攻撃 ⑶ 威圧的な言動 ⑷ 土下座の要求 ⑸ 執拗な言動

⑹ 拘束的な行動 ⑺ 差別的な言動 ⑻ 性的な言動 ⑼ 従業員個人への攻撃 等

【今後の流れ】

東京都は、顧客等、就業者、事業者に対してカスタマーハラスメント防止に関する施策を実施するとしています。

・情報の提供

・啓発及び教育

・助言及び相談

・その他施策

その上で、今後都が実施する施策の例として、次のものが挙げられています。

⑴ 都の事業等に関する情報の提供(ウェブサイト等)

⑵ カスタマーハラスメントの防止に関する理解を深めるための啓発・教育

⑶ 労働問題や消費生活問題に関する助言・相談

⑷ 中小企業等に対する専門家による助言・相談

就労者の中には、合理的な配慮が求められるひとも多くいます。カスタマーハラスメントに繋がりやすい傾向にもある当該就労者に対する配慮等も含んで議論が進んでいくことが望ましく、そうあるべきだと望んでいます。

出典)

厚生労働省HP(2024.6.8時点 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_34888.html )

厚生労働省チラシ(2024.6.8時点 https://www.mhlw.go.jp/content/000637497.pdf )

心理的負荷による精神障害の認定基準(基発0901第2号 令和5年9月1日)

東京産業局HP(2024.6.8時点https://www.hataraku.metro.tokyo.lg.jp/plan/kasuhara/index.html )

東京産業局「カスタマーハラスメント防止対策に関する検討部会第4回 令和6年4月22日」 資料

https://www.hataraku.metro.tokyo.lg.jp/plan/0425jimukyoku%20kasuharai4.pdf

東京労働局「公労使による「新しい東京」実現会議令和6年5月22日開催」資料

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240522/k10014456761000.html

こちらは、社労士会千代田支部自転車同好会で佐渡に視察に行ったときの様子です。ドイツには「自転車あれば医者いらず」との言葉があるとのことで、健康にいい乗り物とされています。

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