メンタルヘルス

ソーシャルワーク面接の構造と技術

「ソーシャルワーク面接の構造と技術」が社内でのコミュニケーション活性につかえるのでは?と思っています。

「ソーシャルワーク面接は、ソーシャルワークの展開過程にあるように、個人や家族、グループからの相談にのったり、情報収集をしたり、アセスメント、支援計画をたて、支援実施、評価等を行うためを目的で行われる。」1)とされています。

 このソーシャルワーク面接の構造についてはアイビィ(アメリカのカウンセリング心理学者アレン・E・アイビィ)の三角形モデル(マイクロ技法の階層表)が基本となります。アイビィは多数あったカウンセリング理論を統合し三角形モデルとして構造化しマイクロカウンセリングを提唱した人です。カウンセリングの最も基本的な技法は「聴くこと」ですが、それをはっきりと観察するためには「かかわり行動」があるとしました。アイビィはこの「かかわり行動」を三角形の底辺にある最も基本的なものとして定義し4つの要素で説明しています。それは「視線の位置」「言い伝え」「ボディランゲージ」「声のトーン」です。話のスピードやトーンによって相手に興味をもっていますかどうか伝わるとされており、ラポール(信頼関係)の形成には重要ですとしています。また、開かれた質問やはげましや言い換え、感情・意味の反映等基本的傾聴の連鎖でラポールを築くことを提唱しています。感情の反映としてクライエントの言語化されない感情を観察し、根底にある感情に気づくように支援することを述べています。

 そこで、面談時の必要な技術としては、クライエントとの間に受容、共感、自己一致が求められると考えます。この受容・共感・自己一致はクライエントセンタードアプローチを唱えたロジャーズが提唱しています。受容とは無条件の肯定的配慮であり、共感とはクライエントの世界を自分の世界のように感じることで、自己一致とはクライエントの関係において心理的に安定しており、共感したありのままの自分を受け入れることを指しています。相手の話を否定せず、伝え返しや要約で共感を表すなどです。また、カーカフが提唱した減るピング技法があります。事前段階ではラポール形成のための技法として傾聴や親身なかかわりを述べています。第1段階として自己探索を促す技法として勘定への応答とし、第2段階は目的を明らかにするために、意味・問題・目標・感情の意識化を図ります。第3段階では目標への計画を立て実行するため、目標の明確化・行動計画の作成・スケジュールと強化法の設定、行動化の準備、各段階の検討を行う。以上の援助過程を繰り返すことで達成に近づける支援を行います。

 その他技法としてはシステマチックアプローチも有効と考えます。これはクライエントと良い人間関係(ラポール、リレーション)をつくり、共同してカウンセリングの目標を定め、計画を立て、その達成の方策を体系的に進める技法です。問題の把握、目標設定、方策の実行、結果の評価の順に進めていきます。この時の問題の把握のところでクライエント自身に気づきや認知の変化を与えることが重要であり、自己解決できるよう進めるべきだと考えられます。技法以外には、クライエントには分かりやすい言葉を持ちいて、丁寧に話すことやクライエントが心理的不安なく落ち着ける環境を設定することも大切と考えます。また、適切な距離感が必要です。ラポールの形成を意識しすぎて共感しようと距離を縮めると転移を生むことがある。一方でメモばかり取っていますとクライエントは自分の話を聞いていないと感じ、ラポールの形成ができなくなる恐れがあるため注意が必要です。

 しかし、面接には限界があるとされています。「その内容は対象者の主観であり、客観的な情報とは異なることを忘れえてはいけない。また、面接者と対象者との関係性によって、得られる情報が異なることもある」2)とされています。以上のとおり、普段からロールプレイングやスーパービジョンなど行い、十分な技術の鍛錬が必要とされるでしょう。

[引用文献

  1. 精神保健福祉士養成セミナー編集委員会編集『精神保健福祉の理論と相談援助の展開Ⅰ』へるす出版2020年P157
  2. 福祉臨床シリーズ編集委員会編『心理学理論と心理的支援』弘文堂2021年P152-153

[参考文献]

精神保健福祉士養成セミナー編集委員会編集『精神保健福祉の理論と相談援助の展開Ⅰ』へるす出版2020年

・福祉臨床シリーズ編集委員会編『精神保健福祉士相談援助の基盤(専門)』弘文堂2017年

・福祉臨床シリーズ編集委員会編『精神保健福祉士援助演習(基礎)』弘文堂2017年

福祉臨床シリーズ編集委員会編『精神保健福祉士援助演習(専門)』弘文堂2020年

・福祉臨床シリーズ編集委員会編『心理学理論と心理的支援』弘文堂2021年

・アイビィ著/福原真知子ほか訳編『マイクロカウンセリング』木村書店1985年

・小山文彦『精神科医の話の聞き方10のセオリー』創元社2019年

・久保修一『職場にいますメンタル疾患者・発達障害者と上手に付き合う方法』日本法令2018年

・木村周著『キャリアコンサルティング理論と実際』雇用問題研究会2019年

・井上孝代・山﨑晃・藤崎眞知代編著『心理支援論』風間書房2011年

・白井利明編著『生涯発達の理論と支援』金子書房2020年

関連記事