社会福祉

社会保障制度の定義と社会福祉の定義について

はじめに:

現在の社会保障制度は1942年にイギリスのウィリアム・ベヴァリッジによって提唱された「ベヴァリッジ報告」の影響を大きく受けているとされている。「ゆりかごから墓場まで」のスローガンの元で5大巨悪とした窮乏、病気、無知、不潔、怠惰に対し、社会保険や住宅政策等を普遍的に提供することを強調したものであり、「社会保険を中心とした所得補償の仕組み」1)であり、これは世界各国に戦後の福祉国家の見本とされた。日本における社会保障の定義は1950年に社会保障制度審議会に提出された「社会保障制度に関する勧告」(以下「50年勧告」とする)で次のように定義されている。「いわゆる社会保障制度とは、疾病、負傷、分娩、廃疾、死亡、老齢、失業、多子その他困窮の原因に対し、保険的方法又は直接公の負担において経済補償の途を講じ、生活困窮に陥ったものに対しては、国家扶助によって最低限度の生活を保障するとともに、公衆衛生および社会福祉の向上を図り、もって全ての国民が文化的社会の成員たるに値する生活を営むことができるようにすることをいうのである。」2) つまりこの定義では社会保障は①社会保険②国家扶助③公衆衛生及び医療④社会福祉と整理される。

社会福祉について:

同じ50年勧告で社会福祉は次のように定義されている。「国家扶助の適用をうけている者、身体障害者、児童、その他援護育成を要するものが、自立してその能力を発揮できるよう、必要な生活指導、更生指導、その他の援護育成を行うことをいうのである。」3)としており、経済的な側面でなく、「生活指導」「更生補導」「その他の援護育成」という直接的な支援を行うことと捉えることができる』とされている。

社会福祉の概念について:

そこで、社会福祉の概念を整理すると次の通りとなる。『「社会福祉」に関する理論研究おいては、社会福祉という用語を「目的概念」と「実体概念」とに分ける。目的概念とは、用いる言葉が、具体的な制度・実践を示すのではなく、ある方向性を示していると考えるとよい「社会福祉の実現」というような場合がそれにあたる。これに対して実体概念(論者によっては実態概念と表現することもある)は、具体的な取組みや援助について示す言葉である。』4)とされている。続けて実体概念は広義の社会福祉と狭義の社会福祉に区別することができるとしている。広義の社会福祉は政策などを示し狭義の社会福祉はそれに伴う施策やサービス自体を示している。つまり目的概念は社会福祉の価値観や取り組む姿勢姿勢など抽象的な総称として用いられ、実体概念は具体的な実行事項を示すとされている。

まとめ

以上を鑑み、社会保障制度と社会福祉の関係性を考えると、目的概念としての社会福祉には人々の幸せの実現という取り組みを指すため、社会保障制度と実体概念としての社会福祉が含まれると考える。従って、社会保障制度と実体概念としての社会福祉の関係性を述べると、お互いが補完し合う関係であると考える。法整備からもその関係が考えられる。福祉六法とされる生活保護法、児童福祉法、身体障害者福祉法、知的障害者福祉法、老人福祉法、母子及び父子並びに寡婦福祉法において実体概念である具体的な実行事項を実現化させるため整備したものと考える。

時代の変化に合わせて進化を続ける法整備を鑑み、これからの社会福祉は「個人の尊厳、普遍平等性、互恵的共生の福祉原理に則り、マイノリティのエンパワーメントという領域において、人権保障、社会的保障、生活世界の再構築に、主体的・相互変容的に取り組むことによって、相互の自己実現を進め、社会構造を変革する政策、サービス、活動、運動を言う。」5)とあるとおり、マイノリティを個性としてとらえ、お互いを尊重し合うことで自他を受け入れ自己実現の手助けとなることが望まれる。

[引用文献]

  1. 福祉臨床シリーズ編集委員会編『社会保障』弘文堂2022年P13
  2. 福祉臨床シリーズ編集委員会編『現代社会と福祉』弘文堂2020年P27
  3. 同上P27
  4. 同上P22
  5. 加藤博史編著『福祉とは何だろう』ミネルヴァ書房2011年P27

[参考文献]

・福祉臨床シリーズ編集委員会編『社会保障』弘文堂2022年

・福祉臨床シリーズ編集委員会編『現代社会と福祉』弘文堂2020年

・福祉臨床シリーズ編集委員会編『福祉行財政と福祉計画』弘文堂2020年

・加藤博史編著『福祉とは何だろう』ミネルヴァ書房2011年

・杉本章著『障害者はどう生きてきたか』現代書館2008年

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